歯学センターの窓から

「医療の本質」歯学センターの窓から no.93

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スウェーデンで最初の手術。
50歳女性、橋からの転落で頭に大怪我。
眼科、頭頸部外科、耳鼻科、口腔外科。4 科の連携で3 度の手術。
しかし患者さんの視力だけは回復しません。
私も看護師さんについ愚痴をこぼしました。
「やはり彼女の目は見える様にならないね」すかさず彼女は「ドクターそんな事はありません。 何かまだ出来る事があるはずです!」と。
次の日彼女は眼鏡を買って来て、目の見えない患者さんにそれを掛けさせたのです。
看護師さんはその患者さんが事故前に眼鏡をしていた写真を見つけ出し、眼鏡を掛ける事によって彼女が再び物を見たい、と願う様になってくれるかもしれない。と考えたそうです。
患者さんの症状ばかりを見て判断してしまった私には考えもつかないケアで、さらに北欧の医療の本質を教わったケースでした。
医師はどんな時でも人の気持ちも診断しなくてはならない。
私が心より反省させられた、雪と氷の国での温かい出来事でした。

田北行宏